認知症…おじいちゃんがボケてしもた話
うちのおじいちゃんは、熊太郎と言います。
とっても強そうな名前なんですが…ᕦ(ò_óˇ)ᕤ
実際のところは心穏やかで、
私の母はおじいちゃんに一度も怒られたことがないらしいです。
そもそもなぜ熊太郎かというと、、、
おじいちゃんは赤ちゃんの頃、とても身体が弱かったので、
強い熊のようになって欲しくて両親が考えてつけたのだそうです。
おじいちゃんは、トラックの運転手さんでした。
あまり頑張って働くタイプの人ではなく、
何日か仕事をしては何日か家にいるような生活をしていたそうです。
そして、おじいちゃんが家にいる間に、
なんと母はよく料理の仕方を教わっていたそうです。
私の父が交通事故で亡くなった後、
1人で心細かった母は大好きなおじいちゃんに
頼み込んで、兵庫県の尼崎市から引っ越して来てもらいました。
料理も上手で穏やかなおじいちゃんが来てくれたら百人力!
そう思ったお母さんですが・・・
一年も経たないうちに、
おじいちゃんの様子がなんだかおかしくなってきたのです。
なかなかうちの中にあるものを覚えない、
その上、自分の物を置いたところまでもすぐ忘れる。
「この家は間取りが違う!」
と言い出す。
そのうち、母のことも押しかけて来たおばあちゃんのことさえも、
「どなたさんですか?」
と訊くようになっていました。
でもなぜか、
私たち孫のことはちゃんと分かっていて
相変わらず可愛がってくれました。
そんなある日のこと…
事件は起こったのです!
40年前というとタバコ全盛期。
おじいちゃんはボケてもタバコだけは吸っていて、
家族も強制的にそれを取り上げることはしませんでした。
いつものように、
わたしが学校から帰って来た時のこと…
ランドセルを部屋におき、
手を洗って・・・よし!
と、
棚からおやつを取り出して居間の方へ行くと、
そこには静かに座ってタバコをゆっくり吸っているおじいちゃんが居ました。
「おー、おじいちゃん、ただいまー」
「おー、キヨかー、お帰り。学校どうやった?」
見たところ、何も変なところはない。
(おじいちゃん、今日さえてるやん♬)
と内心思いながら、
私はおじいちゃんに話しかけました。
「あんなー、今日ドッチボールでな〜Kくんが無茶苦茶でな。
わたしが当てたボール取れへんかったのに、取れてるっていい・・
お、お、おじいちゃん(゚o゚;;」
「ん〜?なんや〜?」
「タバコタバコ!灰落ちるでー!( ゚д゚)」
「あーほんまやな」
と言って、目の前にある、
ガラスの大きい灰皿で灰を消す・・・
のかと思いきや、
あろうことか、その隣にあったごつい電卓を灰皿と間違えて
真上からグリグリとタバコを押し付けたのです!!@@
「うぇーい、おじいちゃん!!火事になる!!」
「ああ、ちょっと手元が狂うたわ、ごめんな!」
700度になるともいわれるタバコ…
そんな物を押し付けられたら
電卓はひとたまりもありません!
タバコの火は電卓を通り越して畳まで届いてしまいました。
「あっ!」
畳には真っ黒な焦げ穴が開いていました。
そして電卓は、左の液晶部分が溶岩のように溶けて見えなくなり、
その日を境に、私たち家族は必然的に筆算か暗算を強いられるようになりました・・・(p_-)
そんな事件が起こる度に、
母や私達姉妹も大変過ぎて思わず文句を言ってしまうのですが、
本来穏やかなおじいちゃんなので「ふんふん…」と普通に聞き流します。
ただ…物凄〜く大変なのは、
おばあちゃんがそんなおじいちゃんの
ボケたところを見つけて文句を言った時…。
おばあちゃんは自分の夫が認知症になったのがよほど認められないのか、
言っても直らないというのに罵詈雑言をおじいちゃんに浴びせまくります。
あ、そうそう…
一度、忘れられないことがありました。
突然、部屋の中が公衆トイレに見えたのか、
おじいちゃんはおもむろに部屋の角に行き「おしっこ」をしてしまったのです。
そして、その現場をおばあちゃんが見ていたから、もう大変です。
「自分で掃除しろー!」
と雑巾を押し付け、
自分がどんなにここで肩身の狭い思いをしているか…
そんな思いにさらにイヤミを込めて大声で怒鳴り続けていた…その時。
顔を真っ赤にしたおじいちゃんが、
グーで一発 おばあちゃんの顔面を思い切り殴ったのです。
・・・ ドタッ
おばあちゃんは思いっきり後ろに倒れ、
おばあちゃんのメガネのフレームは
グニャリとひん曲がりました。
「大丈夫ー!!!おばあちゃん!!!」
私が駆け寄ってみると、
フレームの下の顔には、
まるく青パンダみたいなアザが出来ていました。
一瞬、静かになり…
次の瞬間、
おばあちゃんは地ひびきのような声で泣き出しました。
なんで私がこんな目に合わないといけないのか、
今までどんなにみんなのためにやって来たと思ってるんだ…的なことを
ずーーーッと涙ながらに訴えました。
私たち姉妹はおばあちゃんを横目に、
洗剤とかスポンジとか雑巾をかき集めて、
おじいちゃんの粗相の後始末をしました。
こういった事件が、
いつ母の仕事中に起こるかわからない状況だったので、
私の気分が穏やかに休まる時はまるでありませんでした。
まぁ、それでもこういう環境にいたおかげで、
ちょっとやそっとのことがあっても自分はパニックにならないのかな?
と思います。
子供の頃に味わった経験というのは、
どんなことでも貴重で本当に忘れられません。
というわけで、
おじいちゃん!
私を鍛えてくれてありがとう!